WPW症候群と頻拍発作
1)WPW症候群とは
WPW症候群とは、正常な刺激伝導系とは別に心房心室間にKent束といわれる副側伝導路が存在し、洞結節からの刺激がこの2つの伝導路を通して心室に伝わっているものをいう(図21)2)。Kent束を通る副側伝導路は正常の刺激伝導系より高速に刺激が伝わるため、心電図波形ではデルタ波がみられる(図21-1)。これをシェーマにしたものが図21-2である。臨床的にWPW症候群が問題になるのは、WPW症候群が頻拍発作を起こしたときで、最も多い頻拍発作が発作性上室性頻拍、2番目が心房細動であり、この2つが重要である。
【図21】WPW症候群
1、WPW症候群の機序と心電図
2、WPW症候群のシェーマ
2)WPW症候群の頻拍発作
発作性上室性頻拍発作は、前述した房室回帰性頻拍(AVRT)で、Kent側を通るリエントリー回路が逆行性に回ったものである(図21-3)。心房細動発作は、偽性心室頻拍(pseudo VT:WPW+AF)といわれ、心房のランダムリエントリーがKent束を通って心室内に多量に下りてきたものである。そのため、偽性心室頻拍の心電図では、基線のゆれ(細動波)とデルタ波がみられる(図21-4)。偽性心室頻拍は心房細動発作ではあるが、上室性不整脈に使用される抗不整脈薬である、アデノシン、β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリスの使用は禁忌である。これらの薬剤を使うと房室結節での正常な刺激伝導系をブロックしてしまい、それにより高速バイパスとなっているKent束に一気に刺激が流れ心室の付加が異常に高まるためである。
【図21】WPW症候群
3、房室回帰性頻拍(AVRT)の機序と心電図
4、偽性心室頻拍(WPW+AF)の機序と心電図
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