1、期外収縮(premature contraction)とその分類
期外収縮とは、洞結節による刺激よりも早期に洞結節以外から興奮(刺激)が起こったものをいい、具体的には心房、房室接合部、心室からの異所性興奮による収縮である。異所性興奮の部位により図5のとおり3つに分類され、心房由来の心房性期外収縮(PAC:premature atrial contraction)、房室接合部由来の房室接合部性期外収縮(PJC:premature junctional contraction)、心室由来の心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)がある。
【図5】期外収縮の分類
心房性期外収縮と接合部期外収縮は区別が困難な場合もあり、それらを合わせて上室性期外収縮(PSVC:premature supraventricular contraction)という。期外収縮の心電図波形についてのまとめを表8に示す。
【表8】期外収縮の波形分類
2、上室性期外収縮(PSVC:premature supraventricular contraction)
上室性期外収縮とは、心房または房室接合部での異所性興奮であるが、心電図上では、本来出るべきP・QRSの位置よりも早く現れたものと、通常の心拍の間に割り込んだものがある。心房性期外収縮も接合部期外収縮もQRS幅は正常(狭いQRS)で基本調律と同じQRS波形となる(変行伝導を伴う場合はQRS波が変化)。P波については、心房性期外収縮では基本調律とは異なるP波となり(図6-1)、接合部期外収縮ではQRSの中に隠れて不明であったり、逆転P波になっている(図6-2)。
【図6】期外収縮の機序と心電図
1、心房性期外収縮(PAC:premature atrial contraction)
2、接合部期外収縮(PJC:premature junctional contraction)
通常、出現頻度が低ければ問題はないが、頻度が高ければ基礎疾患を考えなければならない。基礎疾患としては、虚血性心疾患をはじめとする各種心疾患である。日常生活との関連については、ストレス、疲労、睡眠不足、コーヒーやアルコールの飲みすぎでもみられる。なお、上室性期外収縮の頻発が心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍の引き金となることがある。心房性期外収縮が3連発以上続いたものを反復性心房頻拍という。
3、心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)
心室性期外収縮とは、心室での異所性興奮であるが、異所性興奮が通常の心拍より早く出るものと通常の心拍間に割り込んだものがある。通常P波は認められず(時に逆転Pがみられる場合がある)、QRS幅は広く、T波が逆転していることが多い(図6-3)。
【図6】期外収縮の機序と心電図
3、心室性期外収縮(PVC:premature ventricular contraction)
出現頻度が低い場合は問題ないが、出現頻度が高くなると問題で、Lownによる心室性期外収縮の重症度分類(表9)の3~5度、つまり、多源性(波形の違うQRS)(図7-1)、連発(short run)(図7-2)、R on T(Tの上にRが乗っている形)(図7-3)の場合は、心室頻拍や心室細動へ移行しやすいので危険である。R on Tから心室頻拍への移行心電図を図7-4に示す。
【表9】心室性期外収縮の重症度(Lown分類)
【図7】危険な心室性期外収縮
1、多源性(形の異なるQRSが出現)
2、連発(short run)
3、R on T(Tの上にRが乗る)
4、「R on T」からの心室頻拍
このような危険な期外収縮から心室頻拍・心室細動への移行シェーマを図8に示す。基礎疾患としては、虚血性心疾患をはじめとする各種心疾患である。日常生活との関連についてはストレス、疲労、睡眠不足でもみられる。
【図8】心室性期外収縮から心室頻拍・心室細動への移行シェーマ
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