大隅良典教授がノーベル医学生理学賞を受賞|「オートファジー」とは|アルツハイマー病との関連は?

大隅良典教授がノーベル医学生理学賞を受賞

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今年(2016年)のノーベル医学生理学賞に「オートファジー」のメカニズムを解明した東京工業大学栄誉教授の大隅良典教授(71歳)が選ばれました。

日本人として、そして医療現場に立つものとして、このノーベル医学生理学賞はとても誇らしく喜ばしいことですね。

NHKのニュースでも詳しく解説されてありましたが、大隅教授は、平成5年にオートファジーに関係する遺伝子を世界で初めて発見し、その後もオートファジーに関係する遺伝子を発見し続け、多くの謎に包まれていたオートファジーの分子メカニズムについて解明していきました。
このオートファジーの分子機構の解明が受賞理由となったそうです。

ではこのオートファジーとはどのようなものなのでしょうか。

オートファジーとは

オートファジーとはなんだろう?

オートファジーは、直訳すると自食:(自分を食べる)と訳されますが、オートファジーとはどのようなものなのでしょうか?
細胞は飢餓状態となりエネルギーが必要となると、細胞の中にあるたんぱく質や老朽化した細胞内小器官(ミトコンドリアなど、細胞が生き残るために必要で様々な役割を担う装置のようなもの)などをアミノ酸に分解し、そのアミノ酸をエネルギー源として利用したり新しい蛋白質を生成したりします。
このように、細胞が自分自身の中にあるたんぱく質などを分解してしまうことをオートファジーといいます。

オートファジーは飢餓状態の時だけ誘導される?

従来、オートファジーは飢餓状態において誘導されることから、エネルギーが必要な時にエネルギーを確保するためにオートファジーが行なわれていると理解されていました。
さらに最近では、飢餓状態でない時でも細胞内で蛋白質の分解を行い、細胞の代謝に大きく関わっていることが分かってきています。

なぜオートファジーの解明がこれほどに評価されたのでしょうか?

近年、オートファジーがアルツハイマー病や癌などの疾患に関わっていることが多くの医学研究より明らかになりつつあります。
オートファジーのメカニズムが大隅教授の研究により解明されたことで、今後はオートファジーの分子機構をターゲットにしてこれらの難治性疾患に対する治療薬の開発が成功するかもしれません。
オートファジーという現象だけを見れば、ただ細胞内のたんぱく質などを分解するというだけのことですが、これがアルツハイマー病や癌に関わっていて、これらの疾患の治療に希望の光が見えるかもしれない、と聞くととてもワクワクしますよね。

では、これらの疾患とオートファジーはどのように関わっているのでしょうか?

アルツハイマー病とオートファジーの関係

アルツハイマー病とは?症状と原因

アルツハイマー病とは、記憶や思考能力がゆっくりと障害される病気で、不可逆的で進行性の認知症を呈します。
現在、アルツハイマー病は異常たんぱく質が脳の細胞内外に蓄積して脳の細胞が変性するために発症するといわれており、パーキンソン病などの疾患も同様の機序で発症するといわれています。

アルツハイマー病とオートファジーの関係

「オートファジー」とアルツハイマー病の関連を簡単に説明すると、この異常たんぱく質を除去する細胞機構の1つとして細胞内のたんぱく質などを分解する「オートファジー」が関連しているのではないかと言われているのです。
実際に「オートファジー」がアルツハイマー病の病態を抑制する結果を示唆する研究も多く存在しています。
一方で、『オートファジーを活性化すると細胞外アミロイド(異常たんぱく質)が増加することを示した研究(※1)』や、『オートファジーに必須の遺伝子Atg7を欠損させると細胞外ベータアミロイド(異常たんぱく質)が減少することを示した研究(※2)』も報告されているそうで、「オートファジー」がアルツハイマー病の病態の進行を抑制している、と断言できるほど単純ではないようです。

※1
細胞内異常たんぱく質を分解するオートファジーを活性化すると、細胞外で異常たんぱく質が増えたということ。
※2
細胞内異常たんぱく質を分解するオートファージ―を行うために必須の遺伝子を欠損させたら、細胞外異常たんぱく質が減ったということ。

ここまで、オートファジーについて説明してきました。
オートファジーについては大隅教授の研究室のHPにも詳しく解説されてあります。興味がある方はご覧になってはいかがでしょうか。