失神・失神性めまい2 失神・失神性めまいの鑑別診断

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失神・失神性めまいの鑑別診断

失神・失神性めまいの原因を診断していくための鑑別診断は表5のとおりである。

【表5】失神・失神性めまいの鑑別診断

1、心・大血管疾患(心原性失神)  
1)アダムス・ストークス症候群
2)大動脈弁狭窄症 
3)肥大型心筋症
4)虚血性心疾患(急性心筋梗塞、異型狭心症)
5)大血管疾患(胸部大動脈解離、肺塞栓症)

2、循環血液量減少性疾患(循環血液量減少性失神
1)消化管出血
2)脱水

3、神経調節異常(神経調節性失神)
1)血管迷走神経反射(血管迷走神経性失神)
2)状況失神症候群(状況失神:排尿失神、排便失神、咳嗽失神など)
3)頸動脈洞症候群(頸動脈洞性失神)

4、起立性低血圧(起立性失神):自律神経障害疾患や薬剤によるもの
変性疾患(Shy-Drager症候群、Parkinson症候群、オリーブ橋小脳萎縮症など)
ニューロパシー(糖尿病性ニューロパシー、アミロイドニューロパシー)
高齢者の自律神経の病的機能異常
薬剤(下記薬剤など)

5、薬剤(薬剤性失神)
降圧薬、硝酸薬、抗不整脈薬、精神神経作用薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、
アルコールなど

6、脳血管障害 
1)椎骨脳底動脈循環不全
2)くも膜下出血

7、精神疾患
1)てんかん(大発作、欠神発作、精神運動発作)
2)ヒステリー、パニック障害
3)睡眠発作(ナルコレプシー)

8、その他
1)過換気症候群
2)低酸素血症(気管支喘息、肺炎など)
3)低血糖

9、原因不明

※「1」~「5」が失神・失神性めまいの主要原因疾患

この中で、1)アダムス・ストークス症候群、2)消化管出血、3)神経調節障害(神経調節性失神)、4)起立性低血圧(起立性失神)、5)薬剤(薬剤性失神)、の5つが鑑別診断として特に重要である。アダムス・ストークス症候群は重篤度が高い点で、神経調節障害(神経調節性失神)は頻度が高い点で、消化管出血と起立性低血圧は正確な鑑別が必要ということで、重要である。
また、失神・失神性めまいを起こす原因は、大部分が脳循環不全(ショックと同じ病態)であることを前述したが、この脳循環不全によって起こるものが、失神・失神性めまいの主要原因疾患となる。この主要原因疾患と病態との関係を表6に示す。

【表6】失神・失神性めまいの主要原因疾患と循環不全の病態
失神表6

失神・失神性めまいの原因診断は表5の鑑別診断を基に症状・所見をみて、検査を行っていくが、その診断フローチャートを図3に示す。

【表3】失神性めまいのフローチャート
失神図3
そして、失神・失神性めまいの原因診断を行う上で知っておかなければならない重要ポイントは表7のとおりである。

【表7】失神・失神性めまい診断の要点

  1. 心原性失神が重篤度の点で最も重要
    失神・失神性めまいの原因診断で見逃してはならない最も重篤な疾患群は心・大血管疾患が原因で起こる心原性失神である。中でもアダムス・ストークス症候群が頻度的にも重篤度においても最も重要である。この疾患を見逃すと生命予後に関与する恐れがある。
  2. 神経調節性失神が最も多い、まず予後は良好
    失神・失神性めまいの原因疾患の中で最も頻度が高いものが神経調節性失神(反射性失神)である。なかでも、血管迷走神経反射による血管迷走神経性失神が最も多い。神経調節性失神は、ほとんどが器質的異常ではないので、まず予後は良好である。
  3. 起立性失神の原因は自律神経障害疾患や薬剤が原因
    失神・失神性めまいの原因疾患の中で、正確に理解していないと誤診する可能性がある概念として起立性低血圧がある。起立性低血圧で起こる失神を起立性失神というが、これは慢性疾患である自律神経障害疾患や薬剤によって起こるものをさし、急性疾患である消化管出血などの循環血液量減少性疾患によるものは含まれない。
  4. 消化管出血は起立性低血圧や脳疾患(脳血管障害)と誤診されやすいので要注意
    失神・失神性めまいの原因疾患の中で消化管出血の頻度は決して少なくない。消化管出血が原因で起こる失神・失神性めまいは起立時に起こることが多く、起立性低血圧と誤診されやすい。前述したように、通常、起立性失神の原因の中に消化管出血は含まれないので起立時に起こる失神・失神性めまいの場合は必ず消化管出血などの循環血液量減少性疾患を否定することが重要である。また、消化管出血の場合の訴えが浮動性めまいに似た訴えをするため脳疾患(脳血管障害)と誤診される危険がある。これについても要注意である。
  5. 薬剤性失神の原因薬剤は起立性失神を起こす場合が多いがすべてではない
    薬剤が原因でおこる失神・失神性めまいを薬剤性失神という。その原因薬は、降圧薬(α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、利尿薬)、硝酸薬、抗不整脈薬、精神神経作用薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、アルコールなどである。薬剤性失神の原因薬剤は起立性低血圧の原因
    になる場合が多いが、すべての薬剤が起立性低血圧を起こすわけではない
  6. 脳血管障害が原因での失神・失神性めまいの頻度は低い
    失神・失神性めまいの原因の中で脳血管障害によるものの頻度は低い。原因疾患に含まれる脳血管障害は、椎骨脳底動脈循環不全とくも膜下出血であるが、これらは、一過性の意識の系の障害であり、通常は意識障害となる。

各原因疾患の詳細は次回の記事で説明する。

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福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。