頻拍性不整脈② 発作性上室性頻拍とは|心電図所見、診断、治療について詳しく解説

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発作性上室性頻拍(PSVTparoxysmal supraventricular tachycardia

発作性上室性頻拍とは、房室結節、心房心室間、洞結節、心房内でリエントリー回路を作った不整脈である。発作性上室性頻拍の機序のシェーマと心電図を14に示す。リエントリーの部位は房室結節が最も多く、2番目に多いのが心房心室間で、この2つで発作性上室性頻拍の約90%を占める。房室結節でのリエントリーによるものを房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT:atrioventricular nodal reentrant tachycardia14-1)、心房心室間でのリエントリーによるものを房室回帰性頻拍(AVRT:atrioventricular reentrant tachycardia14-2)という。ちなみにAVRTはWPW症候群の頻拍発作のときにみられるものである。心拍数は、150回/分前後から250回/分ぐらいで、心電図では、QRS幅は狭く、RR間隔は整で、QRSの前に通常P波はみえない。P波については、AVNRTではQRS波の中に完全または部分的に埋もれて不明であり、AVRTではQRSの後の逆転Pとして認められる。

【図14】発作性上室性頻拍の機序と心電図

1、房室結節リエントリ性頻拍(AVNRT

図14-1

2、房室回帰性頻拍(AVRT

図14-2

基礎疾患としてはWPW症候群、虚血性心疾患、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、甲状腺機能亢進症などがあり、過労や不眠も原因となる。頻拍が安定している場合は、迷走神経刺激またはアデノシン(ATPで大部分が洞調律に戻る。

発作性上室性頻拍の治療

発作性上室性頻拍の治療は、前述の通り迷走神経刺激アデノシン(ATP投与の2つがある。迷走神経刺激とは、副交感神経である迷走神経を刺激して心拍数を落とすもので、洞調律への復帰率は20~25%と低い8)。それに対して、アデノシン(ATP)投与はアデノシンが直接リエントリー回路を切断するため3回までのアデノシン投与により約90%が洞調律に復帰する8)。アデノシン(ATP)の投与は3回まで許容され、3回のアデノシン(ATP)投与により洞性リズムに復帰しない場合は、専門医へのコンサルテーションが必要となる。

迷走神経刺激には、頸動脈洞マッサージバルサルバテスト(息こらえ試験)の2つの方法がある。これらの詳細は2223のとおりである。頸動脈洞マッサージは直接頚動脈洞を刺激して副交感神経である迷走神経を刺激する方法であり、バルサルバテストは息こらえにより胸腔内圧を上げることにより迷走神経を刺激する方法である。

【表22】頸動脈洞マッサージ

禁忌

年齢(中年後期以上:50代以上)、頸動脈雑音

動脈硬化の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症など)

これらの危険因子の1つでもあれば頸動脈洞マッサージはするべきではない

部位

右側頸動脈分岐部(甲状軟骨の頂点の高さで胸鎖乳突筋のくぼみ)

両方の総頸動脈を同時にマッサージしてはいけない

方法

2本の指で1回に5~10秒間、5~10秒間あけて2~3回まで可

副作用

脳梗塞、失神、洞停止、房室ブロック、心静止

備考

心電図モニターを装着し静脈ラインをとり、

アトロピンと経皮的ペーシングがいつでも使えることを確認する

頸動脈洞マッサージに右側を選択する第一の理由は、もし脳梗塞(マッサージによる脳塞栓)を起こした場合、日本人の優位半球はほとんどが左側のため、左脳梗塞より右脳梗塞の方が失語等の優位半球症状の出る確率が低いからである。二番目の理由が、右側の方が洞調律への復帰率が高いためである。

【表23】バルサルバテスト(息こらえ試験)

1、大きく息を吸った後、実際に息を吐き出さずに、息を吐き出すような努力をして胸腔内圧を上げてもらう

2、または、空気を胸いっぱいに吸い込んだ後、がんばれるところまで息を止めてもらう3、この方法は心臓の迷走神経を刺激し、心拍数を遅くする効果がある。

アデノシンは、日本ではアデノシン三リン酸ナトリウム(ATP)が使われる。ちなみに米国ではアデノシン二リン酸ナトリウム(ADP)が使われ、米国で使われるADP6mgは日本で使われるATP10mgと同じ効力である。アデノシン(ATP)の使用法は24のとおりである。

 

【表24】アデノシン(ATP)の使用法

製品名

1、アデホスL(1A=10mg/2ml)

2、アデノシンL(1A=20mg/2ml)

適応

1、発作性上室性頻拍と心房粗動の鑑別

2、安定した発作性上室性頻拍の治療

禁忌

気管支喘息患者には相対的禁忌(気管支収縮作用あり)

投与量

1、初回量は10mgを静注、生食20mlで後押し、

反応がなければ1~2分後に同様の方法で20mgを投与

2、それでも反応がなければ、再度1~2分後に同様の方法で20mgを投与

3、3回まで行っても反応がない場合は専門医にコンサルテーション

4、アデノシンは半減期が非常に短いため、生食20mlでの後押しが必要

5、投与時は12誘導心電図を流すかモニターを記録する

副作用

1、一過性の副作用として皮膚紅潮、胸痛、胸部圧迫感、

2、短時間の心静止、徐脈、心室性期外収縮など

長い心静止が発生した場合は、患者に咳をしてもらうと心拍が現れることが多い

備考

1、万が一に備えて気道確保の準備をし、硫酸アトロピンと経皮的ページングを準備しておく。

2、投与直後に一時的に気分が悪くなるかもしれないが心配ないことを患者に説明しておく

 

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ABOUTこの記事をかいた人

福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。