胸部症状3 動悸とその鑑別診断

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動悸とは

動悸とは、自分の心拍を自覚して不快感を生じる症状である。正常な状態では、自分の心拍を感じて不快になることはないが、心臓の拍動が何らかの問題で異常になると動悸という症状を訴える。動悸の一般的な表現は「どきどきする。」、「脈が飛ぶ。」などという訴えである。動悸を訴える場合の心臓の拍動異常は2つに大別され、心拍が不規則と感じる場合と心拍は規則正しいが自分の心拍を強く感じる場合である。このような症状が出た場合の心電図変化は、前者の場合はRR間隔が不整な波形であり、後者の場合はRR間隔が整な波形である(表14)。

【表14】動悸の感じ方

心拍の感じ方 心電図変化
不規則 RR間隔が不整
規則的 RR間隔が整

動悸が出現したときは一般的には何らかの心電図異常が起こっているはずなので、必ず動悸が起こっているときの心電図をとらなければならない。動悸が出現した時点の心電図をとることができれば、原因診断はおおむね可能となる。しかし、病院に来たときには動悸が既に消失している場合もあり、その場合は、24時間心電図まで行わなければならない場合がある。

動悸の鑑別診断

動悸が起こっているときの心電図をとることができれば、その心電図をもとに、原因の心電図異常を診断する。動悸の原因の多くは心臓由来であり、特に不整脈による場合が多い。一般的に多いのが心房細動や発作性上室性頻拍などの上室性頻拍である。動悸を起こす心電図異常は、表15のとおりで、RR間隔が不整及び整のそれぞれに対して徐脈、頻拍、正常心拍数に分けられ、最終的に波形診断が可能である。波形診断の詳細説明、及びそれぞれの波形に対する対応の詳細説明は不整脈の章を参照していただきたい。

【表15】動悸の原因波形

  1. RR間隔が不整(脈が不規則
    • 徐脈(<60回/分)
      2度Ⅰ型房室ブロック、2度Ⅱ型房室ブロック、洞停止、洞房ブロック
    • 正常心拍数(60~100回/分)
      上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房細動
    • 頻拍(>100回/分)
      心房細動、反復性心房頻拍(心房性期外収縮の連発)、多源性心房頻拍、偽性心室頻拍
  2. RR間隔が整(脈が規則的)
    • 徐脈(<60回/分)
      洞性徐脈、3度房室ブロック
    • 正常心拍数(60~100回/分)
      洞性リズム、心房粗動
    • 頻拍(>100回/分)
      洞性頻拍、発作性上室性頻拍、心房粗動、心室頻拍(単形性心室頻拍)

この中で、正常心拍数の洞性リズムと洞性頻拍が原因で動悸が起こっている場合は、その原因診断が必要となる。その原因疾患の鑑別診断を表16に示す。

【表16】正常心拍数洞性リズム、洞性頻拍の場合の原因疾患

  • 正常心拍数洞性リズム
    1. 高血圧
    2. 器質的心疾患(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎など)または、それらによる心不全
  • 洞性頻拍
    1. 器質的心疾患(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎など)または、それらによる心不全
    2. 内分泌・代謝疾患
      1. 甲状腺機能亢進症
      2. 褐色細胞腫
      3. 低血糖
    3. 出血・脱水
    4. 発熱
    5. 貧血
    6. 慢性呼吸器疾患(COPDなど)
    7. 薬剤・外因性
      1. アトロピン、カテコラミン
      2. アルコール、コーヒー、喫煙
    8. 心因性
      1. 心臓神経症
      2. 過換気症候群
      3. 精神的な不安・興奮

心臓由来でない動悸は、ほとんどが洞性頻拍として発症する。逆に言えば、洞性頻拍以外で起こった動悸は心臓由来と考えるのが一般的である。

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福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。