胸部症状2 呼吸困難とその鑑別診断

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呼吸困難とは

 患者は息苦しさを感じたときに「息苦しい。」と表現する。呼吸困難とは、一般的に患者が「息苦しい。」と表現した場合に規定される症状である。呼吸困難の原因疾患で最も重要なものは低酸素血症(呼吸不全)の原因になる疾患群である。そして次に重要なものは過換気の原因になる疾患群である。
ところで、胸痛、呼吸困難という胸部症状はお互いにオーバーラップする場合があり、主訴を呼吸困難と考えた場合は、胸痛の原因になる疾患、特に胸痛の原因となる循環器疾患は呼吸困難の原因疾患として常に考えておかなければならない。また、患者の訴えとして「胸が苦しい。」という場合があり、胸痛なのか呼吸困難なのかよくわからない場合もあり、そのような場合は両方の鑑別が必要になる。

呼吸困難の鑑別診断

 呼吸困難の鑑別診断は表12のとおりである。

【表12】呼吸困難の鑑別診断

  1. 低酸素血症(呼吸不全)の原因疾患
     1、喉頭蓋炎、喉頭浮腫、気道異物など
     2、気管支喘息、気管支浮腫
     3、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性憎悪
     4、肺炎、気管支炎
     5、肺水腫(心原性、肺性、腎性、肝性、神経原性)
       心原性肺水腫(左心不全)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、など
     6、肺塞栓症
     7、気胸(特に緊張性気胸)
     8、神経・筋疾患(呼吸筋麻痺): ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィーなど
  2. 過換気の原因疾患
     1、過換気症候群(過換気の原因疾患の大部分)
     2、糖尿病性ケトアシドーシス
     3、尿毒症
  3. 胸痛の原因になる循環器疾患
     1、心タンポナーデ
     2、不整脈(徐脈・頻拍)
     3、器質的心疾患(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎など)または、これらによる左心不全、
     4、大動脈解離
  4. その他 
    1、高度貧血
前述したとおり、呼吸困難の原因疾患で最も重要なものは低酸素血症(呼吸不全)の原因になる疾患群であり、次に重要なものは過換気の原因になる疾患群である。他には胸痛の原因となる循環器疾患が呼吸困難の原因疾患となる。呼吸困難に対応する場合は、呼吸のバイタルサインの要因であるSpO2・呼吸数、動脈血液ガス(ABG)の測定、心電図、胸部X-Pは必須であり、心エコーや胸部CTが必要な場合も多い。
低酸素血症(呼吸不全)の原因疾患の鑑別詳細については呼吸不全の項を参照していただきたい。過換気の原因疾患で最も頻度が高いのは過換気症候群であり、要点は表13のとおりである。
【表13】過換気症候群の要点

  • 概念
  • 器質的異常がないにもかかわらず、
    発作的に不随意の過呼吸(呼吸数の増加)が起こる病態である。
    精神的な要因が強く、いろいろな臨床症状を呈する。

  • 疫学
  • 若い女性に多い。

  • 症状
  • 呼吸困難、過呼吸、口周囲や四肢先端のしびれ・感覚異常、テタニー、けいれん、動悸など

  • 所見
  • 呼吸性アルカローシス、PaCO2の低下

  • 治療
  • 精神的ストレスの除去

過換気症候群は若い女性にみられることが多く、原因は主に精神的なストレスによるものである。よって、その精神的なストレスを除去することが治療となる。糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症は代謝性アシドーシスの代償として過換気になって呼吸困難を訴えている。そのため、代謝性アシドーシスの原因疾患に対する治療が必要である。胸痛の原因となる循環器疾患については胸痛の原因診断の項を参照していただきたい。

胸部症状1 胸痛とその鑑別診断

2016.09.16
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ABOUTこの記事をかいた人

福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。