めまい3 前庭性めまいの原因診断とその疾患

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前庭性めまいの原因診断方法

1)前庭性めまいの原因診断法の全体像

 
前庭性めまいを大別すると、中枢性めまい、末梢性めまい、その他に分類されることを前述した。前庭性めまいの鑑別診断は表3のとおりである。

【図3】前庭性めまい(回転性めまい、浮動性めまい)の鑑別診断
めまい表3
この中で最も頻度の高い疾患は良性発作性頭位めまい症である。しかし、最も重篤な疾患群、つまり生命予後(死ぬかもしれない)に関与するものが中枢性めまいであり、中でも重篤度、緊急度、頻度において重要な疾患が小脳出血、小脳梗塞、椎骨脳底動脈循環不全である。
前庭性めまいの原因診断フローチャートを図4に示し、これを基に原因疾患の診断法を説明する。このフローチャートは重篤な疾患から診断・除外するという考え方から、①中枢性めまい→②末梢性めまい・その他、の順で診断・除外していく。
【図4】前庭性めまいのフローチャート
めまい図4

2)中枢性めまいの原因診断法

前庭性めまいの診断には、中枢性めまいの診断・除外(頭蓋内疾患の診断・除外)が最も重要で、特に、小脳出血・小脳梗塞・椎骨脳底動脈循環不全の診断・除外が重要である。他にはテント下脳腫瘍、聴神経腫瘍(頭蓋外)や脳炎・髄膜炎の診断・除外である。中枢性めまいが疑われる症状や所見は表2のとおりで、意識障害、頭痛、小脳症状(歩行障害、協調運動障害)、脳幹症状(片麻痺、四肢麻痺、球麻痺、眼球運動障害)や垂直眼振などである。このような症状や所見が認められると中枢性めまいが強く疑われ、頭部CTは必須である。また、必要ならMRI・MRAまで施行しなければならない。
頭部CTで、小脳に出血所見が認められれば小脳出血、梗塞所見が認められれば小脳梗塞、テント下(脳幹、小脳)や内耳道内に腫瘍所見が認められればテント下脳腫瘍、聴神経腫瘍(頭蓋外)である。新病変が認められなければ、MRI・MRAを行い、小脳梗塞や椎骨脳底動脈循環不全の診断・除外を行う。超急性期の小脳梗塞でもMRIの拡散強調画像で診断がつき、椎骨脳底動脈循環不全はMRAでの椎骨脳底動脈の閉塞・狭窄所見やMRIから概ね診断可能である。
 脳炎・髄膜炎では通常頭部CTでは異常を認めない。発熱や項部硬直があれば脳炎・髄膜炎を疑い、髄液検査(腰椎穿刺)を行う。髄液異常(細胞数の増加)が認められれば脳炎・髄膜炎である。めまいを起こす脳炎・髄膜炎は小脳または脳幹の脳炎・髄膜炎で、感冒に引き続き、めまい、歩行障害、協調運動障害、眼球運動障害などが出現する。ここまでが、中枢性めまいと頭蓋外聴神経腫瘍の鑑別となる。

3)末梢性めまい・その他の原因診断法

 
次に末梢性めまい・その他の鑑別を行う1)2)。まず蝸牛症状(難聴・耳鳴)がめまいと同時に出現するかどうかで鑑別診断が分かれる。蝸牛症状を伴うものは、メニエール病、突発性難聴、聴神経腫瘍(頭蓋外)、Ramsay Hunt症候群、薬剤性めまいであり、伴わないものが、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎である。頸性めまいや心因性めまいも一般的には蝸牛症状を伴わない。
良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴の各々の診断基準は表4~7のとおりで、これらをめまいの反復性と蝸牛症状で鑑別したものが表8、めまいの持続時間で鑑別したものが表9である。

【表4】良性発作性頭位めまい症の診断基準(厚生省特定疾患前庭機能調査研究班)
めまい表4
【表5】前庭神経炎の診断基準(厚生省前庭機能異常調査研究班)
めまい表5
【表6】メニエール病の診断基準(厚生省特定疾患メニエール病調査研究班)
表6
【表7】突発性難聴の診断基準(厚生省特定疾患突発性難聴調査研究班)
めまい表7
【表8】末梢性めまいの鑑別(めまいの反復性と蝸牛症状)
めまい表8
【表9】末梢性めまいの鑑別(めまいの持続時間)
めまい表9

なお、メニエール病の中には蝸牛症状を伴わない前庭型メニエール病という非定型例がある(後述)。そして、各々の疾患要点(後述)を参照して最終診断を行う。

前庭性めまいの原因疾患要点

1、小脳出血、小脳梗塞

 
 頭痛の項、「頭痛の原因疾患要点」を参照

2、椎骨脳底動脈循環不全

 椎骨脳底動脈領域の一過性脳虚血発作である。椎骨脳底動脈の狭窄・閉塞により、その領域に血流障害が起こり、めまいや脳幹・小脳の症状(意識障害、四肢麻痺、眼球運動障害、歩行障害、協調運動障害)が一過性に出現するものをいう。

3、テント下脳腫瘍、聴神経腫瘍(頭蓋外)

 めまいを起こす脳腫瘍は、小脳橋角部、脳幹、小脳の腫瘍である。めまいを起こす脳腫瘍の中で最も多いものは聴神経腫瘍であるが、これは、内耳道内(頭蓋外)のⅧ脳神経(聴神経)に発生する腫瘍で、徐々に進行する難聴・耳鳴を伴い、進行すると頭蓋内に浸潤して小脳橋角腫瘍となる。めまいは非回転性である。

4、脳炎・髄膜炎

 中枢神経系の感染症で、一般症状としては発熱、頭痛、悪心・嘔吐、項部硬直がみられる。めまいを起こす脳炎・髄膜炎は小脳または脳幹の脳炎・髄膜炎で、感冒に引き続き、めまい、歩行障害、協調運動障害、眼球運動障害などが出現する。

5、良性発作性頭位めまい症

 頭位変換によって起こるめまい。大部分が回転性である。難聴・耳鳴は伴わない。持続時間は多くの場合10分以下である。(診断基準は表4参照)

6、前庭神経炎

 ウイルス感染が原因と考えられている神経炎、強い回転性めまいを起こす。難聴・耳鳴は伴わない。症状発現の前に感冒様症状を示すことがある。突発的に出現する通常一度のみの激しい自発性めまいで数日中(1~3日)に回復することが多い。(診断基準は表5参照)

7、メニエール病

 反復する回転性めまい(ほとんどが回転性)と、それに伴って変動(反復)する一側性の難聴・耳鳴が主症状である。めまいは反復を繰り返し数分から数時間持続する。ただし、蝸牛症状(難聴・耳鳴)を伴わずにめまい発作を反復する非定型例があり、これを「前庭型メニエール病」という。この型のめまいの持続時間は数時間~1日程度である。(診断基準は表6参照)

8、(めまいを伴う)突発性難聴

 ウイルスによる第Ⅷ脳神経(聴神経)の神経炎と考えられ、突然の難聴・耳鳴(一側性が多い)が起こり、めまいを伴う。ほとんどが回転性である。めまいは持続し反復はない。数日から数週間続く。耳鳴・難聴の予後は必ずしも良くない。
(診断基準は表7参照)

9、Ramsay Hunt症候群

 帯状疱疹ウイルスにより第Ⅶ脳神経(顔面神経)と第Ⅷ脳神経(聴神経)がおかされたもので、同側の末梢性顔面神経麻痺、難聴・耳鳴、耳介から外耳道の湿疹を認める。耳性帯状疱疹とも呼ばれる

10、薬剤性めまい

薬剤の副作用によって起こるめまい。代表的なものとして以下のようなものがある。

  • 抗菌薬:アミノグリコシド系、ミノサイクリン、
  • 鎮痛薬:アセチルサリチル酸、インドメタシン
  • 利尿薬:エタクリン酸、フロセミド
  • 抗結核薬:リファンピシン
  • 坑腫瘍薬:シスプラチン
  • 抗てんかん薬:フェニトイン、カルバマゼピン

11、頸性めまい

頸部の疾患が原因で起こるめまいを頸性めまいと総称する。頸椎の異常、つまり頸椎症や頸部椎間板ヘルニアなどが原因となることが多く、その結果、頸部交感神経異常や椎骨脳底動脈循環不全を起こしめまいを発症する。頸性めまいで起こる椎骨脳底動脈循環不全とは、頸椎症の患者が頸部を傾けたときに椎骨動脈の狭窄・閉塞がおこり、一過性の椎骨脳底動脈領域の脳虚血が起こるためである。

12、心因性めまい

 器質的障害がないのにめまいを訴えるもので、心理的要因が強く関与する病態である。不安感が原因で起こるものや、不安神経症・うつ病など精神科的疾患(心療内科的疾患)が原因で起こるめまいである。

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ABOUTこの記事をかいた人

福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。