吐血・下血と腰痛について

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吐血・下血

1)吐血・下血とは

 吐血とは、口から血液が排出された場合をいい、食道・胃・十二指腸などの上部消化管からの出血が原因である。時に、口腔内の出血や鼻出血を飲み込み、それが嘔吐された場合や、喀血(気管支や肺からの出血)を吐血と間違う場合があるため注意が必要である。血液が胃内に留まっていない場合は鮮血色を呈し、血液が胃内に留まると赤褐色からコーヒー残渣様になる。
 下血とは、肛門から血液が排出された場合をいい、上部消化管からの出血と下部消化管からの出血に区別される。一般的には、上部消化管からの出血では黒色便やタール便、下部消化管からの出血では鮮血便である。

2)吐血・下血の鑑別診断

吐血の鑑別診断は表5のとおりである。

【表5】吐血の鑑別診断

  1. 胃・十二指腸潰瘍
  2. 食道・胃静脈瘤破裂
  3. マロリー・ワイズ症候群
  4. 急性胃粘膜病変
  5. 食道炎・食道潰瘍(逆流性食道炎)
  6. 食道癌、胃癌、胃ポリープ
吐血の原因の大部分を占めるのが胃・十二指腸潰瘍である。他には食道・胃静脈瘤破裂、マロリー・ワイズ症候群、急性胃粘膜病変などがあり、ここまでで吐血の原因のほとんどを占める。他には、食道炎・食道潰瘍(逆流性食道炎)、食道癌、胃癌、胃ポリープなどがある。
 下血の鑑別診断は表6のとおりである。
【表6】下血の鑑別診断

  1. 上部消化管出血(胃・十二指腸潰瘍など)
  2. 大腸憩室
  3. 虚血性腸炎
  4. 痔核、肛門裂傷
  5. 細菌性腸炎
  6. 薬剤起因性出血性大腸炎
  7. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
  8. 直腸潰瘍
  9. 大腸癌、大腸ポリープ
上部消化管出血(胃・十二指腸潰瘍など)では黒色便やタール便が、下部消化管出血では鮮血便が特徴的で、特に痔核、肛門裂傷では排便後の鮮血便が特徴的である。下血の原因疾患では、上部消化管出血(胃・十二指腸潰瘍など)、大腸憩室、虚血性腸炎、痔核・肛門裂傷の4疾患でその大部分を占める。

腰痛診断の考え方

 腰部の疼痛を腰痛(lumbago)というが、腰痛は一般的には腰部の中央部から全体にかけての疼痛であることが多い。しかし、原因疾患によっては右や左の一側に限局した場合もあり、それらも含めて腰痛として扱う。腰痛の鑑別診断は表7のとおりである。

【表7】腰痛の鑑別診断
表7
腰痛の原因疾患で頻度の高い疾患は整形外科疾患(急性腰痛症、腰椎椎間板ヘルニア、変形性腰椎症)であるが、最も重篤な原因疾患は腹部大動脈瘤破裂である。特に高齢者の腰痛はこの疾患を第一に鑑別しなければならない。腹部大動脈瘤破裂を疑えば、腹部エコー・腹部造影CTが必要となる。また、一側に限局した側腰部から側腹部の疼痛の場合は泌尿器疾患(尿管結石、腎梗塞)を考えるべきである。尿管結石は中年に多く、腎梗塞は中高年に多い、特に心房細動があれば腎梗塞を考え腹部造影CTが必要となる。また、消化器疾患(急性膵炎、胆石症・胆嚢胆管炎)でも一側の側腰部痛が起こるが、これは前述した疾患の放散痛として現れたものである。

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ABOUTこの記事をかいた人

福岡記念病院救急科部長。一般社団法人・福岡博多トレーニングセンター(福岡博多TC)理事長。 愛媛県生まれ、1986年愛媛大学医学部医学科卒。日本救急医学会専門医、日本脳神経外科学会専門医、臨床研修指導医。医学部卒業後、最初の約10年間は脳神経外科医、その後の約20年間は救急医(ER型救急医)として勤務し、「ER型救急システム」を構築する。1990年代後半からはBLS・ACLS(心肺停止・呼吸停止・不整脈・急性冠症候群・脳卒中の初期診療)の救急医学教育にも従事。2011年に一般社団法人・福岡博多トレーニングセンターを設立し理事長として現在に至る。主な著書に、『ニッポンER』(海拓舎)、『心肺停止と不整脈』(日経BP)、『ERで役立つ救急症候学』(CBR)などがある。