頻拍の診断アルゴリズム
1)頻拍の診断アルゴリズム総論
心電図診断アルゴリズムを表17、図23~25にまとめる。心電図診断のための指標は、1)QRS幅が狭いか広いか、2)RR間隔が整か不整か、3)QRS幅が狭い場合、QRSの前のPが確認できるかできないか、この3つの指標を順番に判定することで心電図診断は概ね可能になる。
【表17】頻拍の波形診断
【図23】頻拍の診断アルゴリズム(全体像)
【図24】QRS幅の狭い頻拍の診断アルゴリズム
【図25】QRS幅が広い頻拍の診断アルゴリズム
2)発作性上室性頻拍と心房粗動(2:1伝導)の鑑別
QRS幅が狭い頻拍の診断で問題になるのは、RR間隔が整で、QRSの前のP波が無いまたは不明な場合で、発作性上室性頻拍と心房粗動(2:1伝導)の2つの波形が鑑別診断として残ってくる。これらの鑑別は図26のとおりである。
【図26】発作性上室性頻拍と心房粗動の鑑別
両者の心電図による鑑別は、理論的には、基線水平部の確認、またはQRSの後の逆転P波の確認ができれば発作性上室性頻拍であり、F波(鋸歯状)が確認できれば心房粗動である。しかし、臨床現場では心電図による両者の鑑別が難しい場合がある。その場合は迷走神経刺激やアデノシン(ATP)投与により鑑別することができる(詳細は後述)。ちなみに、迷走神経刺激やアデノシン(ATP)投与は、発作性上室性頻拍には治療にもなる。これらにより、フラットラインが認められるかまたは洞調律に復帰すれば発作性上室性頻拍であり、F波が確認されれば心房粗動である。
3)QRS幅が広い頻拍の鑑別
QRS幅が広い頻拍は大部分(約80~90%)が心室頻拍で、重篤な場合が大部分である。そのため、初期診療対応の1番は専門家へのコンサルテーションである。このグループに対する心電図診断アルゴリズムの詳細は図25のとおりである。
【図25】QRS幅が広い頻拍の診断アルゴリズム
まず、QRS幅が広い頻拍に対しては前述したとおりRR間隔が整か不整に分ける。RR間隔が整であれば概ね単形性心室頻拍である。しかし時に、変行伝導を伴う上室性頻拍の場合もあり鑑別が必要になる。安定していれば、変行伝導を伴う上室性頻拍との鑑別にアデノシン(ATP)投与が許容されている。アデノシン(ATP)投与により、変行伝導を伴う上室性頻拍であれば一時的に徐脈になるか洞性リズムに復帰するが、単形性心室頻拍であれば無効である4)。
次にRR間隔が不整であれば、多形性心室頻拍か偽性心室頻拍(WPW+AF)である。偽性心室頻拍(WPW+AF)では基線のゆれ(細動波)やデルタ波がみられる。心室頻拍の心電図診断は前述したとおりであるが、臨床的には多形性心室頻拍(torsades de pointesを含む)はほとんど無脈性である。
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