頻拍の概念
頻拍は大きく分けて、上室性と心室性の2つに大別される(表6)。この中で救急現場で重要なものは、前述したとおり、洞性頻拍、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍(単形性心室頻拍)の計5つである。これらの詳細は別のページで説明する。。
【表6】不整脈の分類(洞性徐脈、洞性頻拍を含む)
ところで、頻拍の機序及び心電図所見を理解するうえで2つの重要な概念がある。それはリエントリーとWPW症候群である。リエントリー(reentry)とは、心臓内に異所性刺激(正常でない刺激)が起こり、それが回路を形成して旋回してしまう現象をいう。この回路が新たな刺激起源となり頻拍性不整脈を起こす。リエントリーは心房、心室のどこでも起こり、不整脈全体の約半数にみられ、不整脈の原因で最も多い。リエントリー性不整脈としては、期外収縮、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍などがある。リエントリー性不整脈は、開始と終了が突然で、心房細動を除き規則正しい(RR間隔が整)。ちなみに、心房細動によるリエントリーをランダムリエントリーという。WPW症候群については別のページで詳しく説明するのでそこを参照していただきたい。
洞性頻拍(ST:sinus tachycardia)
洞性頻拍は前述したとおり不整脈ではなく、何らかの原因により洞結節での刺激が速くなったものである。心電図では心拍数が速い以外に異常はないが、一般的には150回/分以下である。洞性頻拍の機序シェーマと心電図を図13に示す。洞性頻拍はその原因が問題となり、洞性頻拍をみた場合は必ず原因検索が必要である。洞性頻拍の原因を表16に示す。洞性頻拍の治療はその原因治療である。
【図13】洞性頻拍の機序と心電図
- 日常的出来事
運動緊張、不安、興奮アルコール、喫煙、コーヒー - 心因性
過換気症候群心臓神経症 - 循環血液量関連病態
出血・脱水発熱貧血 - 心疾患器質的心疾患または、それらによる心不全(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎など)
- 内分泌・代謝疾患
甲状腺機能亢進症褐色細胞腫低血糖 - 慢性呼吸器疾患
慢性閉塞性肺疾患など - 薬剤アトロピン、カテコラミン
心電図講義のご案内!
心電図の読み方を本やネットで学んで理解しても、実際の心電図波形を見ると理解したはずのことが分からなくなってしまうことはありませんか?
そのようなお悩みをお持ちの方のために、福岡博多BLS,ACLSトレーニングセンターでは心電図講習を行っております。
大変ご好評いただいているコースです。
詳細は以下よりご確認ください。