脳血管障害(脳卒中と脳血管障害の違い)
脳血管障害(CVD:cerebro-vascular disease )とは脳血管の異常が存在する全ての疾患を包括した概念で、脳卒中は脳血管障害の一部である。脳血管障害の分類は表3のとおりである。脳血管障害と脳卒中の違いは、脳血管障害が画像上の責任病巣の有無に関わらず症状が早期に消失する病態(一過性脳虚血性発作)及び無症候性の病態までも含める一方で、脳卒中は症状が出現してそれが確定したもののみをさす点である。
【表3】脳血管障害(CVD:cerebro-vascular disease)の分類
一過性脳虚血性発作(TIA:transient ischemic attack)は脳梗塞とよく似た病態であるが脳梗塞の範疇には入らない。脳梗塞と一過性脳虚血発作はどちらも虚血性脳血管障害ではあるが病態が違う。脳梗塞は出現した神経症状が確定したものであるのに対して、一過性脳虚血発作は出現した神経症状が消失したものである。つまり、一過性脳虚血発作は症状が確定していないため(消失したため)脳卒中には含まれないが、脳梗塞の危険因子の一つである。(一過性脳虚血発作についての詳細は下を参照)
無症候性脳血管障害は、画像診断上、脳梗塞や脳出血の所見が確認されるが症状がないものをいい、無症候性脳血管病変は画像診断上、脳血管異常がみられるが、症状がないものをいう。
一過性脳虚血発作
一過性脳虚血発作とは脳血管の閉塞や狭窄により、その支配領域に虚血が起こり、一時的に神経症状が出現したがその後症状が消失したものいう。前述したとおり症状が確定していないため(消失したため)脳卒中には含まれない。
一過性脳虚血発作の定義は、症状発症後消失までの時間が24時間以内であるが、この数字は現実的に意味をなさない。そのため、現在の概念では、症状消失までの時間が1時間以内と変わってきた。しかし、これでも実際の臨床現場では現実的ではない。というのは、一過性脳虚血発作では、症状が消失するまでの時間は通常数分以内で、ほとんどが15分以内であるからだ。そこで、症状が15分以上継続している場合は症状確定とみなして脳梗塞、それ以前に症状が消失した場合は一過性脳虚血発作として区別するのが現実的である。