1)虚血性心疾患
虚血性心疾患(IHD:ischemic heart disease)とは、心筋が虚血に陥り胸痛等の症状を発症する疾患を総称したもので、安定狭心症(stable angina)、不安定狭心症(unstable angina)、急性心筋梗塞(AMI: acute myocardial infarction)、冠攣縮性狭心症(coronary spastic angina)からなる。この中で不安定狭心症と急性心筋梗塞は同じ病態のため総括して急性冠症候群(ACS:acute coronary syndromes)といわれる。これらの病態の説明とシェーマをまとめたものが図11)である。
【図1】虚血性心疾患の分類(病態分類)
2)安定狭心症
安定狭心症とは、冠動脈に器質的な狭窄はあるが普段は問題なく労作時などの心筋需要が高まったときのみ血液供給が不足して症状が出現するもので、心筋梗塞への移行は稀である。
3)急性冠症候群
急性冠症候群は、急性心筋梗塞(心臓性突然死を含む)と不安定狭心症からなり、この2つの疾患は程度の差はあるものの同じ病態である。心筋が壊死に陥ったものが急性心筋梗塞、心筋が壊死を免れたものが不安定狭心症である。そのため、不安定狭心症は心筋梗塞へ移行する危険が高い。急性冠症候群の病態は、冠動脈の狭窄部位である粥状動脈硬化病変(冠動脈プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成が基盤となっており、この血栓が冠動脈を閉塞または狭窄することにより発症する。
後述するST上昇型心筋梗塞(STEMI:ST-segment elevation myocardial infarction)は冠動脈が閉塞したもの、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI:non ST-segment elevation myocardial infarction)及び不安定狭心症は冠動脈が狭窄したものである。冠動脈の狭窄・閉塞による血流量の低下または途絶が心筋虚血や心筋壊死を起こし、さらには致命的な不整脈を合併する。
4)冠攣縮狭心症
冠攣縮性狭心症とは、冠動脈の攣縮が原因で冠動脈の狭窄、心筋虚血を起こしたものである。冠攣縮性狭心症の中で心電図上ST上昇が認められたものを異型狭心症という。